論文題目 行政組織の成長と衰退―保健所の個体群生態学
本論文は、行政組織の成長と衰退のメカニズムを探るものであり、その一例として保健行政領域における保健所の成長と衰退を扱っています。行政組織の成長と衰退のうち、衰退に焦点を当てて、膨張志向的官僚制という認識に対する一つの反証を示すとともに、行政組織の成長と衰退が持つ政策上の意味を導出することを目的としています。
具体的には、公衆衛生および保健政策の第一線機関として戦後急激に拡大し、結核対策や乳幼児死亡率の低下において大きな成果を上げた保健所の数と職員数は、行政重要が減少した1960〜70年代ではなく、なぜ1990年代に全盛期の約半数まで縮小したのか、を問題提起しています。
行政組織の成長と衰退に関する先行研究の特徴は、①組織の盛衰の原因を、行政組織の内部管理の問題、政策的目的の衰え、政治的支持の弱化、予算の減少のような単線的な組織の変化だけに注目していたこと、②変化する環境に向けた組織の適応努力に焦点を置いたこと、を挙げられます。
そこで本論文では、以上の問いに答えるために組織理論の個体群生態学モデルを援用して行政組織の盛衰に関する分析枠組を提示しました。具体的には ①行政組織の成長と衰退を複線的に考察することによって、それが持つ政策上の意味合いを導出したこと、②組織が有する構造的慣性に注目して、組織の適応努力の可能性と限界を考察したこと、③政策的有効性という基準に基づく政策決定機構の選択に焦点を置いたこと、④分析対象を組織個体群として捉え、個々の組織には還元されない個体群の変化に注目したこと、に求められます。
本論文の分析枠組みの核心は三つに分けられる。
第一に、組織個体群の基本的ニッチが相対的拡大・縮小が組織の資源確保可能性につながる。
第二に、組織の公式目標、権威の形態、中心となる技術、市場戦略のような組織のコアとなる部分が、組織の成長と存続を担保するものの、環境変化に対する適応が必要な際にはかえって足かせとなり、構造的慣性として作用し、新しい環境への適応を阻害する。
第三に、政策決定機構は競争するほかの行政組織が存在する場合、行政組織間の比較衡量を行い、より政策的有効性が高い組織を選択する。
以上の分析枠組みに基づいて、本論文は保健所個体群を分析対象とし、保健所個体群が、その構造的慣性の制約のために、環境変化に適応できず「淘汰」され、市町村個体群によって「代置」されたことを論証しました。
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